注意1:本編と違い士郎君の一人称ではありません。 注意2:こんなのは私のバー作さんじゃないと思った方はどうかお忘れ下さい。 注意3:オリジナルというか電波設定です。矛盾点は気にしたら負けです。 お知らせ:この作品は坊主さんからネタを頂き、ここに誕生しました。 ネタを下さった坊主さんに感謝です。 fate/stay night もし外伝4 バー作さんの華麗なる彫像生活 interlude 外伝4 「おっはよーシロウ!」 今日も、朝からマスターの元気な声を聞き私の一日は始まる。 私は何時ものように衛宮の家の庭でただ立ち尽くす。 時折、雀やその他の鳥たちが私の肩に止まり囀るのは心地良い。 「むっ! イリヤスフィール! 私のシロウから離れなさい!」 「えー! ダメダメ! 今日は一日私と一緒に居るの!」 剣の英霊たるセイバーとマスターが言い争う。 その様は小動物のじゃれ合いに似て微笑ましい。 む、名乗るのが遅れたな。 私はバーサーカー。 狂戦士の称号を与えられしサーヴァント。 真名をヘラクレスと言う。 ……本来、バーサーカーのクラスに理性は無い。 しかし、生前から狂う事が多かった私は理性が残っている。 尤も喋ることは出来ず自らの意思で動く事も儘成らないが……。 「おはようバーサーカー。今日はワカメと豆腐の味噌汁にしてみた。 メインはシャケの切り身の塩焼きだ。 ところで……海苔はいるか?」 私に話しかけてきた赤き外套を纏いし鷹の目の騎士に対して頷く。 彼はアーチャーのクラスであり、彼の少年、衛宮士郎の可能性の一つであるらしい。 この赤い騎士が大抵の場合私に食事を持ってきてくれる。 私に……いや、サーヴァントに食事は必要ないのだが今回の聖杯戦争に呼び出された者たちは違うようだ。 なので私もその好意を受けとり、食事を取るようにしている。 味に関して言うならば美味いの一言だろう。 私の生きた時代では考えられない料理の数々。 最初など思わず涙腺が緩んでしまったほどだ。 なので私にとっても食事は楽しみなものになっている。 ふむ、少々思考に没頭しすぎたか……。 冷める前に食さねばな。 そう思い、小さな箸と呼ばれる二本の棒を持ち食事を取る。 私が動くのはほぼ食事の時だけだ。 それ以外の時間は常にこの場で立ち、彼等を見続けている。 衛宮士郎を筆頭にこの家の住人や訪れる者たちは変わり者が多い。 ……いや、変わり者しかいないと言ったほうが妥当か。 尤もその変わり者達のおかげでただ立っていることもそう悪くはない。 嘗て、アトラスの変わりに世界を支えた時は退屈だったが……。 「バー作さん、すみませんがお洗濯物を干すのを手伝ってくれませんか?」 私に話しかけてきたのは桜と呼ばれるこの国の花の名を冠する少女だった。 ……何故か、彼女や衛宮士郎他数人は私のことをバー作と呼ぶ。 彼女は時折私とは違った狂い方をする。 アレは……ヘラ様がお怒りになった時と似ていて恐ろしい。 だが、普段は良妻賢母とも言えるほど家庭的な少女だ。 ……出来れば我が主にもその家庭的な面を御教授願いたいものだ。 マスター程の可憐さと美しさがあれば数年の後、引く手数多だろう。 その際、料理などが出来ればさらに高評価に繋がる。 む、どうやら思考がそれてしまったようだ。 私は彼女が数回に分けて持ってきただろう大量の洗濯物を抱え、 一つ一つ丁寧に物干し竿に掛けていく。 ……そう言えばあのアサシン、小次郎とやらの刀と呼ばれる剣も同じ名だったか? 「うわー、バー作さんって相変らず洗濯物を干すのが早くて上手ですね」 ……そうだろうか? 私よりもあの赤き騎士や衛宮士郎の方が上だと思うが。 あの二人の手際は既に神域に達しているのではなかろうか? 「バー作さんのおかげで早く終わっちゃいましたね。 あっ、これは御礼です。くれぐれもセイバーさんに見つからないようにして下さいね」 私の掌の上に数個のカップケーキを置いて彼女は歩いていく。 それを一つ口に含む。 ふむ、いい仕事をしている。 これならばオリュンポスの神々も舌鼓を打つだろう。 そんな事を考えていると、サーヴァントの気配が近づいてきた。 「おっ、良いモン食ってるじゃねえかバー作の旦那」 衛宮邸の塀を飛び越えて入ってきたのは確かアロハシャツと呼ばれる服を着たランサーだった。 彼の英霊は私が此度の聖杯戦争で唯一戦った猛者だ。 その一撃は私に回避するという手段を選ばせず、その身のこなしは私の攻撃を悉く避けきる。 時間にして数分と言ったところだろうが、中々に充実したものだった。 私は内心で思い出し笑いをしながら礼として彼に一つのカップケーキを手渡す。 「ありがとよ旦那。それにしても……坊主もアーチャーもいねえなー」 ケーキを一口で食べてしまいそうのたまう。 ……おそらくこの槍兵は食事でも集りに来たのだろう。 確か今は柳洞寺と呼ばれるところで厄介になっていると言っていた。 「ちっ! 旦那、又来るわ」 そう言って槍兵はまた塀を飛び越えて行く。 毎度衛宮士郎が玄関から出入りしろと言っているのを律儀に忘れているのだろうか? 槍兵が去った後は静かになったので私はただ佇む。 私は、今回の聖杯戦争に呼ばれて幸せなのだろう。 生前私は常人では到底得られない数々の物を得てきた。 しかし私が真に望み、決して得られなかったものがここには有る。 衛宮士郎という不思議な少年を中心にマスターがいて、桜がいて、赤い騎士がいて……。 真この地は素晴らしい。 私がこの地に名をつけるととしたらこう呼ぶだろう、 「全て遠き理想郷(アヴァロン)」 と。 ……彼の騎士王が死後にたどりつくと言われる地。 ……あのセイバーがアーサー王だとは未だに信じられないが……。 「ただいまー!」 ん? どうやらマスターが帰宅したらしい。 「えへへーただいま、バーサーカー」 マスターは花も綻ぶ微笑みでもって私に話しかけてくる。 そう、ここは私にとって理想郷なのだろう。 私はマスターの小さな頭に手をのせ、そっと撫でる。 きょとん、と私の行動を見ていたマスターが突然先程を倍する威力の微笑みを見せる。 「バーサーカー、これからもずっと一緒にいようね!」 その小さな身体でぶつかる様に私の足に抱きつきながらマスター、イリヤは言った。 ならば、この命果てるまで彼女に尽くそう。 それが私の此度の最優先事項だ。 「我が……真名に掛けて」 「……へっ? 今、喋った?」 ガバッっと頭を上げたマスターが驚いたように聞いてくるが黙して答える。 そう、私はバーサーカー。 理性を無くし言葉を忘れ、ただ狂い戦いし者。 尤も……今は衛宮邸の庭で彫像の如く立っているしかすることがないのだが、 それはそれで良いのではなかろうかと思っている。 Interlude out