史上最強 それは武を学ぶものが目指す究極の称号 幾千幾万の者が己の生涯をかけて挑み 幾千幾万の者が夢半ばに散っていく 幾千幾万の者が後世に想いを託し 幾千幾万の者が想いを継いでいく 武とは 戦う術 守る術 己を磨く術など多種多様にして幾つもの道程がある どの道を選ぶか どの道が正しいのか 人の歴史の中で最強と呼ばれた者と同じ道ならばたどりつけるのか 誰もが悩み誰もが選択してきた数々の道 その中でも 最も険しい道を駆け抜け……真っ直ぐに落ちていった者がいた これは 史上最強の称号を与えられた一人の青年の物語である 史上最強の教師 ケンイチ!! 第三話『ドラ○もーん!? 麻帆良学園って何処さ!?』 「えっと、麻帆良学園……? ココって有名なところ? ぜんぜん知らないんだけど……」 五階、もとい誤解が解けて第一回『愛衣による兼一さんのための愛の説教』は終了した。 ……兼一の目から生気が消えかけたことも終了した原因の一つである。 その後、兼一と愛衣はお互いについて話し始め現在に至る。 「えっ!? 麻帆良学園を知らないんですか!? かなり歴史の長い、世界一の学園都市なんですよ!?」 本気で驚いたのか普段は声を荒げない愛衣が大きな声を上げる。 それに対して、兼一は黙して何やら考え込み始めた。 (どう言うことだろう? 確かにあの大きな木にしろこの学園にしろ知らなきゃおかしい。 ……そもそも、こんなところがあるなら絶対に新島の馬鹿が悪巧みしてるよ) 新島春男……宇宙人っぽい悪魔もしくは悪魔っぽい宇宙人。 兼一とは高校時代からの腐れ縁で今でもことあるごとに彼を巻き込もうとする。 妙なカリスマ性があり、ごく一部からは神聖視されていたりなんかする。 備考:教会などでは弱る。 「あ、あの……兼一さん?」 「……へ? って、ごめん! ちょっと考え事をしてて――「うっ……」――あっ!」 兼一の反応がないので再び話しかけていた愛衣。 それに気づき慌てて謝罪をする兼一の耳にかすかなうめき声が聞こえてきた。 何を隠そう彼こそ真っ先に兼一に攻撃されたガンドルフィーニさんだ! 彼が目を開くと、心配そうに覗き込む愛衣と兼一の姿が映った。 聡明な彼はすぐに事態を察する。 「……ふむ、経緯は解らないがどうやら君は敵ではないようだね。 愛衣君が自然体でいることが何よりの証拠だよ」 「えっと、すみませんでした! いきなり銃を出されたんでつい撃退モードのスイッチが……」 ガンドルフィーニに外傷がほどんどないことに安堵して、兼一はすぐさま頭を下げた。 何やら不穏な発言があったが流す方向で。 「いや、こちらも驚いたとはいえ軽はずみな行動をしてしまったからお互い様だろう。 私はガンドルフィーニ、この麻帆良学園で教師兼警備員のようなことをしている」 よろしく、と言う風にガンドルフィーニが握手を求めて右腕を出す。 いきなり自分を倒した相手に、利き腕を出せる彼は中々の豪胆さを持っていると言えるだろう。 それを察したのか、兼一も礼儀正しく応え、握手しながら自己紹介をした。 「あっ、梁山泊の一番弟子で白浜兼一って言います。よろしくお願いします」 そして、自己紹介であえて梁山泊の名前を出した。 これは一種の名刺代わりとなり、敵かどうかが瞬時にわかる便利な言葉なのだ。 今までに意図して名乗った場合で、2割ぐらいの者が即座に攻撃してきたのだが……。 「ん? りょーざんぱく……? すまない。名前と見た目からもわかるとおり私はこの国の者ではない。 だからこの国の裏事情にはあまり詳しくないんだ」 「えっ、貴方も梁山泊を知らないんですか……?」 (……この人も知らないとなると、いよいよ雲行きが怪しくなってきたかな?) いささか自意識過剰にも思えるかもしれないが、兼一が内心でそう考えるのには訳がある。 なぜなら、長老をはじめとして梁山泊の面々は国内外裏表を問わずその名が知れ渡っているのだ。 そして、闇と呼ばれる裏の団体との抗争によって兼一もかなりネームバリューがあがった。 愛衣に関しては見た目からもわかるとおり、幼いため知らなくても何とか納得できる。 しかし、ガンドルフィーニが兼一の名はともかく梁山泊を知らないということは、 彼が裏の人間であるのなら流石におかしいことなのだ。 ……だが、ガンドルフィーニ達からすれば兼一も同じようなものだったのである。 (りょーざんぱくとやらのことはさて置き。愛衣君、君から見て彼は信用できるのかい?) (えっ、は、はい! 兼一さんは今までの不法侵入者と違って信用できると思います。優しい……ですし。 ……それと、さっき聞いたんですけど麻帆良学園のことを知りませんでした) (麻帆良学園のことを!? ……ならどうしてココに居るんだ?) 自分が気絶したあとの経緯について念話で愛衣に聞き彼は考え込んだ。 先ほどの兼一の思考ではないが、裏表関係なく麻帆良学園は有名なのである。 それこそ他の国からもかなりの数の留学生が来るほど全世界的に有名な学園だ。 また、裏側から見てもその特異性と有名度は各地の名所などよりもはるかに上であるかもしれない。 例えば図書館島と呼ばれる大図書館には、世界各所より膨大な量の禁書などが集められている。 そのため、それらの本を狙って進入してくる者たちも後を絶たないほどだ。 それ以外にも麻帆良学園には様々な、裏の者たちから見れば魅力的な部分が数多くある。 なので、麻帆良学園のことを知らないことに疑念を抱いたとしても不思議ではないだろう。 だが、考えたところでお互いがすれ違ったままなので答えがでることはないだろう。 だからガンドルフィーニはその判断を上司に丸投げすることにした。 「……ふむ、白浜兼一君。すまないが一度此処の学園長に会ってもらえないかな? どうやら君も何故自分が麻帆良学園に居るのかわからないようだし、学園長なら力になってくれるだろう」 「学園長って言うと、此処で一番偉い人ですか? ……わかりました。ボクも状況が今一わからないのでお話を聞かせてもらいたいです」 兼一からすれば、状況を知るための要素は多いにこしたことはない。 そのため、ガンドルフィーニの提案に頷いたのだ。 「決まりだね。愛衣君、すまないが彼を学園長のところへ案内してくれないか? 私は高音君を医務室まで運ぼう」 「えっ、私がですか!? ……わかりました。お姉様をよろしくお願いします」 「ああ。じゃあ白浜君、また後で会おう」 高音を背負い、ガンドルフィーニは森の中へと消えていった。 残された二人はどちらから切り出そうかとお互いに思案し、最初に愛衣が動いた。 「ふ、不束者ですが私が学園長室まで案内させていただきます!」 「えっ、うん。よろしくね」 愛衣の台詞にアレっと思ったが兼一は華麗にスルーした。 そして、 (本気で此処は異世界でしたなんて漫画や小説みたいな展開だったらどうしよう……。 ……信じてますよ、岬越寺師匠!) などと心の中で思いながらテクテクと前を歩いていく愛衣の後について歩き出した。 兼一と愛衣が学園長のもとへと向かっている時、 彼らと別れたガンドルフィーニは携帯電話でことの次第を学園長である近衛老に報告していた。 『ふむ、すると突然の魔力の胎動は彼、白浜兼一と名乗る青年が現れたためだったと君は思うのかね?』 「はい。状況から鑑みてもそうとしか……」 兼一について自分の知る限りを――と言ってもほとんど愛衣に聞いたことだが――を報告する。 『興味深くはあるが……いや、君と愛衣君の人を見る目を信じよう。 ワシはここでのんびりと件の青年の到着を待つとするよ』 「……いえ、できればタカミチ先生を呼んでおいてください」 『ほう、どうしてかねガンドルフィーニ君? 君は彼が危険人物ではないと判断したのではないのかね?』 「それとこれとはまた別の話です。正直、この学園で彼に対抗できる人材はタカミチ先生を含め一握りでしょう。 なら、こと戦闘面では麻帆良教師陣最強の彼に会っておいてもらいたいんですよ」 ガンドルフィーニも、兼一が敵に回る可能性は限りなく低いと思っている。 ほんの少ししか相対していないのだが、彼が生粋のお人よしであることは容易に知れたためだ。 だが、冷徹な魔法使いとしての彼が、高い戦闘能力をもつ兼一を確りとマークしておく必要があると判断した。 『君がそう言うのならタカミチ君を呼んでおこう。ではな』 「よろしくお願いします」 そう言ってガンドルフィーニは携帯を切る。 すると、先ほどまで寝ていた高音がゆっくりと身体をおこした。 「……先生」 「ん? おきたようだね高音君。 いや、世の中広いね。麻帆良でも戦闘能力ならトップ10に入るだろう君の最強モードが負けるなんて」 「くっ、油断していました。まさかアレほどの強さだなんて……」 「負けた私が言えることじゃないが彼の強さは尋常じゃない。そう気に病むことはないよ」 大人の余裕なのか、ガンドルフィーニは年下の兼一に負けたことをそれ程気にしていない。 と言うよりも、敗れて生きていたのだから幸運だったとさえ思っている。 それが、ほんの少しでも動乱を経験した魔法使いの考え方なのだ。 「ですが!」 「良いかい、高音君。白浜兼一君……ああ、さっきの彼の名前だけどね。 白浜君が本気で私達を攻撃してきたのなら今ごろとっくに主に召されているよ」 その言葉に高音も勢いがそがれる。 彼女も兼一が本気でなかったことはわかっている。 情けをかけられたことも……。 「まあ、君は若いんだ。この先成長して彼を追い越すことが不可能って訳じゃない」 頑張ると良いよ、と彼は教師らしく締めくくって歩き出した。 「白浜、兼一……覚えておきなさい! かならずこの借りは返しますわ!」 ガンドルフィーニが歩いてしばし、後ろからそんな声が聞こえてきた。 おそらくだが、夕日に向かって吼えていることだろう……今は夜中ですが。 「……確か、白浜君は高音君の名前を知らないんじゃなかったか?」 まあ紹介するのは次回で良いか、とガンドルフィーニは判断しそのまま歩き出す。 ……このことで、兼一が高音と再開したときに一悶着あるのは……また後日の話。 つづく