史上最強 それは武を学ぶものが目指す究極の称号 幾千幾万の者が己の生涯をかけて挑み 幾千幾万の者が夢半ばに散っていく 幾千幾万の者が後世に想いを託し 幾千幾万の者が想いを継いでいく 武とは 戦う術 守る術 己を磨く術など多種多様にして幾つもの道程がある どの道を選ぶか どの道が正しいのか 人の歴史の中で最強と呼ばれた者と同じ道ならばたどりつけるのか 誰もが悩み誰もが選択してきた数々の道 その中でも 最も険しい道を駆け抜け……真っ直ぐに落ちていった者がいた これは 史上最強の称号を与えられた一人の青年の物語である 史上最強の教師 ケンイチ!! 第六話『ネギ・スプリングフィールド』 前回、兼一とネギがお互いに微妙な感想を抱いている時から今回の話は始まる。 「遅れてしまって申し訳ありません、学園長」 「いやいや、ワシも正確な時間の指定をしていなかったことじゃし。 それに、ネギ君が来てからそう経ってはおらん。タカミチ君が謝罪することはないぞい。 さて、と言うわけで始めようかのう」 自分のせいという訳ではないが謝罪するタカミチ、近衛老も相応の対応をして話を始める。 その二人のやり取りを見ていた兼一は、 『梁山泊でもこうなら……って、それじゃあ師匠達とは言えない……か(涙)』と内心で涙していた。 「まずはおはよう、兼一君。昨日はよく眠れたようじゃな」 「おはようございます。用意されてたのが良い部屋だったんでよく眠れましたよ」 先ほどまでの考えは何処へやら、ニコニコしながら挨拶をする兼一。 近衛老はと言えば、タカミチと同様に兼一の容姿を見て驚くも、年の功か然程反応はしない。 「それはそうと、トレーニングは構わないんじゃが……迷子になるのはよしてくれんかのう?」 「ははは……タカミチさんにも同じことを言われましたよ……」 右斜め下やや45度の方向を向いて、すこーし暗くなる兼一。 何気に迷子になり易いのを気にしているようだ。 ……その割には帰巣本能は高いのだが。 「あの……」 そこへ、先ほどから事態に置いてかれていた少年、ネギから声がかかる。 「おお、そうじゃったそうじゃった。 ネギ君、紹介しよう。彼は白浜兼一君と言って、副担任として君のサポートをしてくれる者じゃよ」 「えっ! そうなんですか!? えっと、ネ、ネギ・スプリングフィールドって言います! よ、よろしくお願いします!」 兼一のことを紹介する近衛老。 自分を補佐してくれるとあって、勢い良くお辞儀をするネギ。 ……何故だろうか、ネギが勘違いしている気がするのは。 「……ははは……えっと、ネギ君で良いかな? 君、歳幾つ?」 「えっ、僕の歳ですか? 10歳ですよ」 不躾な兼一の質問にも素直に答えるネギ・スプリングフィールド、10歳。 その純粋さに、思わず眩しいものを見たように目を細める兼一。 そして、数秒後にネギの歳を脳が理解して黙り込む。 「む? どうしたんじゃね、兼一君?」 「ど、どうしたもこうしたもあるかー! 明らかに労働基準法を無視してますよ!?」 疑問に思った近衛老が問いかけると、何時もの敬語を若干忘れながら兼一が吼えた。 しかも、一般常識を。 ……正直、今更普通の反応をされても困りどころ満載だ。 「あ〜、それはじゃな――「ボ、ボクはちゃんとした教師ですよ!」――ネ、ネギ君?」 兼一の問いに答えようとした近衛老の言葉をさえぎって、ネギが顔を真っ赤にして涙目で反論する。 ネギとて、まだ自分が一人前とは言えないことを理解している。 が、補佐してくれると思った相手である兼一に、自分が子供であることを理由に頑張っていることを否定されたと思い、声を荒げたのだ。 そのことに気づき、兼一も自分の失言を察した。 「えっと、ごめんねネギ君。君がちゃんとした教師じゃないって意味で言ったんじゃなかったんだ。 ただ……」 穏やかに、そして優しく声をかける兼一。 その優しさが溢れ、ほんわかした雰囲気に怒りが薄れるネギ。純粋と言うよりも、単純じゃないかと思える。 兼一ならば史上最強の保父としてもやっていけるだろう。 ……何故か、子供達に揉みくちゃにされる彼を想像できて涙が出てくるのだが。 そして、優しそうな雰囲気をそのままに、笑顔でありながら視線だけで近衛老を睨み、 「ネギ君が魔法使いだとしても法律ぐらい守ってください、ってことを言いたかったんですよ」 そう続けた。 この発言には言われたネギもそうだが、睨まれてちょっとびびっていた近衛老や傍観していたタカミチも驚いた。 なぜなら、ネギのことを魔法使いだとまだ教えていなかったのだから。 ……この状況では今更な気がしないでもないが。 「ええぇ!? ど、どうしてボクが魔法使いだって知ってるんですか!?」 「えっ、どうしてって……学園長とか愛衣さんとかと同じ感じがしたからだけど?」 魔法使いの杖っぽいのも持ってるし、と内心で続けながら当たり前のように言う兼一。 しかし、彼がその感覚、第六感的なものに目覚めるまでに何十回三途の川のほとりに立ったことか……。 渡し舟の船頭さんとは何気に知り合いだ。 常連になってからは、六文銭なしでも乗っけてやるとまで言われているのだ! 全力で辞退したおかげで、今この場に居るわけなのだが……。 「ふむ、これはネギ君について説明する手間が省けたのう。 いかにも、ネギ君はワシらと同じ魔法使いじゃ……最も、まだヒヨコみたいなもんじゃがな。 そして、先ほどの疑問についてなんじゃが……」 ここで、近衛老は一端『コホン』と咳払いを一つして間をおく。 特に意味はない。 「魔法使いは基本的にその存在は秘密であり、一般人に対して無闇矢鱈に正体を明かすことはない。 じゃが、流石に完全に隠し通すことは難しくてのう」 困ったもんじゃな〜と気楽に言ってのける近衛老。 実際、正体がばれたり魔法に関して一般人に知られたりした場合、オコジョにされると言う罰がある。 何でオコジョなのかと小一時間ほど問い詰めたい、と一般ピーポーなら誰もが思うだろう、思ってください。 しかし、魔法使いにしてみれば魔法とは生活の一部であるのだ。 それを完全にするなと言うのは中々厳しいものがある。 「……と言うことは、政治の中枢、それか政治に対して発言権がある人達の中に魔法使い、 もしくは魔法使いのことを知っている協力者が居るんじゃないですか?」 すると、少しの間考えた兼一がそんな事を言った。 ……こんなに思慮深くなったのは、完璧超人の影響に違いない。 それとも、少しでも先を予測しなければ生き残れない状況がそうさせたのか。 「……何故、そう思うのかのう?」 「簡単ですよ。ボクの居たところでも似たようなケースがありましたから」 闇の人たちとかね、と心の中で後を続ける兼一。 闇――殺人こそ武術の真髄とし、それを追求する集団。 文化としての武術の失伝をさけることが起源となっている。 政界に通じるものも多く、たとえ闇の行動によって死者が出ようと、国は黙認している。 闇の実力者達には、梁山泊の武人達と互角に戦うことが可能な者も居る。 (こっちの世界にも居るのかな〜。まぁ、居るだろうけど……絶対会いたくないな) 闇の方々との接点がかなり多かった兼一。 そのほとんどが命の危険をたっぷりと感じさせるような出会いばかりであった。 まあ、中には彼を気に入ったりして……と、これはまた別のお話。 「ほう……中々興味深い話じゃのぉ。と、まあそれは置いておいてじゃ。 確かに、ワシら魔法使いには各国政府や資産家などに多数の協力者が居る。 じゃから、10歳のネギ君を担任にすることも可能じゃったわけじゃ」 近衛老は、兼一の含みを持たせた言葉からある程度内容を察する。 魔法方面だけでなく、裏の世界の内情にも詳しい近衛老ならではと言えるだろう。 「そ、そう言う理由があったんですか……?」 ネギも裏の事情などを知らなかったため、驚きを隠さずにそう呟く。 確かに、ネギも当初は無茶じゃないかと頭の片隅で思っていた。 しかし、麻帆楽に赴任してからはそんなことを考えることがないほど色々とあったため忘れていたのだ。 「ふぉっふぉっ、合点は言ったかのお、兼一君? それでは、改めて自己紹介をしてやってくれんか?」 色々と取り乱したので、そう言えば自分でちゃんと自己紹介をしていなかったことを兼一は思い出した。 「ごめんね、ネギ君。挨拶と自己紹介が遅れちゃって。 僕は白浜兼一、新学期から君の補佐で副担任をすることになったんだ。 短期間かもしれないけど、よろしくね」 そう言って、右手を差し出しながら兼一は微笑む。 「はい! よろしくお願いします。ケンイチさん!」 兼一の笑顔に少々顔を赤らめつつ、ネギも確りと右手を握り返した。 ネギと兼一が握手をして親睦を深めている頃。 脇に控えたタカミチは (これは完全に忘れられてるな〜。 ……それにしても、彼の実力がわからない。 ここに来るまでと違ってどう見ても隙だらけなのに、打ち込んだら負ける気がするなんて……) などと思いながら、禁煙のはずの学園長室でタバコをふかしていたことをここに追記する。 まあ、兼一とネギの初顔合わせが終わった後に入室してきた源しずな先生に怒られた訳なのだが、 本編には余りにも関係ないのでこれにて。 つづく