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史上最強

それは武を学ぶものが目指す究極の称号

幾千幾万の者が己の生涯をかけて挑み

幾千幾万の者が夢半ばに散っていく

幾千幾万の者が後世に想いを託し

幾千幾万の者が想いを継いでいく

武とは 戦う術 守る術 己を磨く術など多種多様にして幾つもの道程がある

どの道を選ぶか

どの道が正しいのか

人の歴史の中で最強と呼ばれた者と同じ道ならばたどりつけるのか

誰もが悩み誰もが選択してきた数々の道

その中でも 最も険しい道を駆け抜け……真っ直ぐに落ちていった者がいた

これは 史上最強の称号を与えられた一人の青年の物語である








史上最強の教師 ケンイチ!! 第七話『史上最強の副担任!? 前編』



麻帆楽学園中等部校舎、三年生の教室がある階の廊下。

既にHRが始まる時間のため廊下には誰も居らず、普通なら静かなそこで騒音を立てている人物が居た。


「うわぁー! どーしよーネギ君! 緊張してきたよー!」


ジタバタジタバタという擬音がしそうなほど慌てふためく騒音の主は、我らが主人公、白浜兼一だったりする。

彼が何故そこまで緊張しているのかと言うと、教師としての初出勤だからであったりする。

見た目はスーツ姿の綺麗な、と言う形容詞が似合う青年なだけにそのギャップは凄まじいの一言である。


「お、落ち着いてくださいケンイチさん! 
 僕のクラスの生徒たちは良い子ばかりだから大丈夫ですよ!!」


それをなだめるのはスーツを着た少年、ネギ・スプリングフィールド。

出会った当初は落ち着いた感じの人だな、と言う印象はガラガラと音をたてて崩れ去っている。

だが、ネギにとって兼一と言う青年が魅力的であると言うことになんの翳りもない。

それは、白浜兼一と言う人間の放つ独特の雰囲気によるものだろう。

ちなみに、彼らが居るすぐ傍の教室からはクスクスと言った笑い声が聞こえてきていたりする。

が、混乱極まった兼一にはそれを気にする余裕がなく、ネギはあまり気にしていない。


「あ、ほらケンイチさん。もうそこが3−Aですよ」


と、何だかんだで進んでいたらしく目的地へと到着したようだ。

兼一もようやく観念したのか、すっと立ち上がり、


「うぅ、こ……こうなったら!」


タラララン、と言う音が聞こえてきそうな動作で上着の内ポケットから手鏡を取り出した。

一体全体鏡で何をするのだろうか、ネギは兼一の動向を見守るべく神妙な顔で見上げている。


「すーはー、よし。岬越寺師匠直伝! 僕はやれる、僕はきっとやれる、僕は……女子中学校でもやっていける!」

「って、自己暗示ですか!?」


ドギャン、と言う擬音をたてて驚くネギ。

兼一はと言うと、先ほどまでのうろたえ様が嘘のように落ち着いている。

どうやら自己暗示は成功したようである。

と言うよりも、効きすぎている気がしないでもない。


「ネギ君、さぁ、行こう!」

「あっ、待ってくださ――っ!?」


先にドアを開けて教室へ入ろうとする兼一を慌てて追いかけようとするネギの視界に、見慣れた物体が映った。

察しの良い諸兄ならばすでに予想できているだろう。

そう、黒板消しである。

昔を思い出してみれば、誰もが経験があるのではないだろうか?

半開きになったドア、明らかに不自然であるのに気づかない状況。

どれだけ急いで入れば黒板消しが落ちるよりも早く、頭を黒板消しの下に入れられるものなのか、だとか。

まぁ、兼一の現在の勢いは正に黒板消しの下に入り込むものであった、ということだけをここに記す。

そんな訳で、ネギの視界ではスローモーションで兼一の頭に落ちていく黒板消しの姿が映り、


「「「「「!?」」」」」


まったく気にしていなかった兼一の右手が霞むと同時に、その姿を兼一の頭上より消すこととなった。

ネギや3のAの生徒の大半が驚きで声を失っている中、自己暗示で軽くトリップしている兼一はズンズン進む。


原作を読んでいる方々にはこの後の展開がもうお分かりだろう。

兼一が進む教卓までの道筋、そこには某双子姉妹&見習いシスターの罠の数々が張り巡らされているのだ!

原作の主人公であり、廊下で慌てているネギ先生は全ての罠に見事に引っかかった。

だが……某師匠の一人であるお方の部屋にご飯を届けたりすること早五年。

ついでに、温泉を覗こうとすること早五年……。

数多の罠を掻い潜り、時にはまともに食らったりしながら今日まで生き残ったのだ。

そんな我らが主人公、白浜兼一青年にその程度の子供だましなトラップが届くはずがない!

……ギャグ補正のかかった時はその限りではないのだが。


案の定、兼一は足下の縄を自然にまたいで回避した。

次に、原作と違い更に悪質になった、足下の縄を囮とした丁度腰辺りに張られた糸をもまたもや霞んだ右手が切断する。

教卓に進む兼一に、糸が切れることで発射された、矢じりがゴム製の合計12本の矢が迫る。

その矢は背後から迫ったモノも含めて兼一の制空圏にかかり、全て掴み取られた。

そして、最後の大トラップ、教卓の丁度頭上から落ちてくる金ダライに至っては兼一の頭上数十センチに迫った瞬間、

誰かが置き忘れた定規を兼一の右手が掴み、その一瞬後、真っ二つになってその姿を教卓の左右に晒すこととなった。

そして、寸前までの奇行があたかもなかったかのように笑みを浮かべながら挨拶をする青年。

…………はっきりと言おう、怪しさ爆発である。

だが、そのこと以上に3−Aの生徒達の好奇心をくすぐる事態がおきる。


「皆さん、始めまして。これから君達の副担任になる白浜兼一です。
 短い間かもしれないけれど、よろしく……って、君は神楽坂さん。3−Aの生徒だったんだ」

「えぇ!? 兼一さんがうちのクラスの副担任なの!?」


驚きをあらわに、イスを弾き飛ばしながら立ち上がったアスナは教卓の兼一を指差しながら叫んだ。

我等がバカレッドは、どうやら朝が早かったためかHR中にうつらうつらしていたらしく、

教室に入ってきた人物が兼一だということに気づいていなかったようだ。

そのため、かなりのオーバーリアクションをしてしまい、更に周りの注目を集める結果となってしまった。


「ほぇー、アスナ、白浜先生と知り合いだったんえー?」


だが、のほほんとしている人物も中には居る。その中の一人であるこのかがアスナに対して問いかけた。

そして、それを切欠に周りも騒ぎ出した。


「へー、アスナも手が早いねぇ。で、白浜先生との馴れ初めを、はいどうぞ!」

「ちょっ、何言ってるのよ朝倉! 兼一さんとは朝のバイトの時に知り合っただけよ!」

「ほう、朝のばいとの時でござるか。相変わらずアスナは頑張っているでござるな〜」


イの一番に切り出したのは、麻帆良のパパラッチと称される朝倉和美。

テープレコーダーを片手に、マイクをアスナへと向けて質問している姿は芸能レポーターを思わせる。

次いで反応したのは3−Aでもかなり目立つプロポーションを持った長瀬楓。
 
興味深げに兼一を見やりながら、アスナの勤労学生振りを褒める。

そして、アスナへの追求の手は兼一の方へとずれていった。


「何歳なんですかー? ついでにアスナとはホントに知り合いなだけですかー?」

「えっと、今年で21で、神楽坂さんとは……うーん、僕は勝手にだけど知り合いよりは友人ぐらいに思ってるよ」

「おろ、パッとしない答えだねぇこりゃ。記事にするにはインパクトが足りないなー。
 ……あれ? 21歳ってことはまだ大学生……って、それを言ったらネギ先生は10歳か」


一般的な質問をしがてら、きっちりアスナとのことを聞いたたそばかすの少女、村上夏美の質問にすんなり答える。

その返答に、特ダネを期待していた朝倉和美は多少落胆し、対したネタにならないとスルーした。

……普通なら十分にネタになる内容であるだろうに。


「さっきの動きは凄かたアルよ! 何か武術をやってるアルか!?」


次に、中国人とは思えない容姿をした少女、古韮……菲(以下:クーフェ)の少々興奮した質問に腕を組んで目を閉じた。


(う〜ん、空手、ムエタイ、柔術、中国拳法、香坂流は基本だし、ボクシング、骨法、サバット、ルチャ・リブレに
 コマンドサンボ、あと長老のアレは、風林寺流格闘術であってるんだっけ? 他にも……うん、まともに全部言っ
 たら確実に危ない人だよ!)


などと考えているのだが、そのごく一部だけでも、一般人からすれば危険人物であることに変わりはないだろう。

そして、一応これならと考えた末に出したのが、下記の武術であったのだが、


「中国拳法を少しね」

「おおっ! 私もネ! 得意なのは形意拳と八卦掌アル、後はミーハーで八極拳と心意六合拳を少しやってるアル!」


思いのほかクーフェに対して受けがよかったようである。

そして、クーフェの言葉によく知った単語を聞いて彼のテンションもじゃっかん上がった。


「へぇ、中国三大武術っと、少林拳を入れて四大武術か。その内の三つもやってるなんて凄いね!
 僕もほとんど同じだよ、後は劈掛拳を友人とその師匠から……実戦で教え込まれたなー……」


などと程ほどに哀愁を漂わせつつも、そのまま中国拳法談義に華が咲きそうだったのだが、


「はいはーい! クーちゃんとばかり話してないで私達の質問にも答えてよー。
 白浜先生は何か特技とか趣味とかあるんですかー?」


そこへ、元気いっぱいとばかりに手を上げつつ、独特な髪型の少女、椎名桜子が質問する。

兼一も一人だけ贔屓して話し続けてはまずいかもと思い、クーフェにこの話は後でと言い、質問の答えを考える。


(ん〜、趣味はすぐ答えられるんだけど、特技かー。打たれ強いことかな? でもそれって微妙だよね。
 むむむ、となると何だろう? 取りあえず自慢できそうなことで答えておこう)


「趣味は読書と植物を育てること。特技は、お茶を点てることと囲碁かな。あとは数ヶ国語を話せるよ」


趣味の部分で図書館探検部が好反応を示し、特技の前半部分では某ロボ子と金髪幼女が反応した。

ちなみに、特技の内の前半二つは、師匠の一人、完璧超人と名高い岬越寺秋雨直伝である。


「それは凄いことですわ。差し支えなければどこの言葉を話せるのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


そんな質問をしてきたのは、貴方は本当に日本人ですか?とつい聞きたくなるような容姿をした少女、雪広あやかである。

ところで、上記には記されてないが、兼一への質問が始まる前に、ネギに対して確りと挨拶をしていたあたり真性である。

何が真性であるか、諸兄なら言わなくてもバッチリだと信じている。


「読み書きもできるのは英語と中国語だけかな。話せるのはロシア語、タイ語、フランス語の三つ。
 日常会話だけで良いなら、アイヌ語とかアフリカの小部族の言葉も幾つか……」


などと指折り数えている兼一の頭の中では、師匠方にそれらの現地に着の身着のまま置いていかれた思い出が浮かんでいる。

そう、決して勉強が出来るわけではない兼一青年がこれだけの言語を話せること、それは必要に駆られたからである。

兼一が恐れる修行のワースト3に入る、『突然放り出された状況から速やかに梁山泊まで帰って来い!……遅かった場合は

スペシャル地獄コースの特訓が待ってるよ♪』この修行の恐ろしさは被害者のことが余り考えられてないことが上げられる。

一昔前にあった電波なんたらと言うテレビ番組など足下にも及ばないその過酷さは体験した者だけが分かるだろう。

想像して欲しい、目を覚ましたら一面密林だったら。一面が白銀の世界だったら!

少しの文章だが、この修行の恐ろしさの一端でも分かっていただければ幸いだ。

きっと、言葉が分からず困っている方々に優しくなれること請け合いだろう。


(人間必死になればできるって見本だよ、ほんと。アマゾンの奥地の人食い部族とも意思の疎通がとれちゃったし)


……生死の狭間で人が何を見るのか? 兼一はその問いに最も近い位置に居るのかもしれない。


「それは凄いですわね。ですけれど、そろそろ質問タイムを終わらせてもらっても良いかしら?
 今日は身体測定の日ですから」


兼一の語学力の高さに、3−Aの面々が驚きの声を上げようとした直前に、

半開きのままであった扉をコンコンと叩きながら我らのしずな先生がそんなことをおっしゃった。

そのことに驚き、今の今まで存在を忘れ去られていたネギが慌てながら、


「で、では皆さん。身体測定ですので……え、えと、あのっ。今すぐ脱いで準備してください!」


そんなことを言いやがりました。

隣で聞いていた兼一は、あれ?っと首をかしげてネギの言葉を反芻し、赤らんだ生徒の顔を見て二人してハッと気づいた。


「「「ネギ先生と白浜先生のエッチ〜〜〜〜〜ッ!」」」


そして、そんな声をBGMに、二人は慌てて教室を後にした。


「ネ、ネギ君。いきなりあの発言はまずいよ。君だけならまだ良いけど、僕だと確実に犯罪だから」

「す、すいません。慌てちゃって……」


まぁ良いけどね〜と兼一は軽く流す。

今までにも女性の着替えを除いてしまったことなどが色々とあるのだ、これぐらいでは"それ程"慌てない。


(にしても、今更ながら僕が女子中学生の教師なんて……馬師父が聞いたら泣きながら悔しがるだろうな)


現状を鑑みながら兼一はため息をはいた。

取りあえず、帰る方法は岬越寺まかせなのだ。自分にやれることは余りない。

だが、そのやれることがない状況が兼一には重石になっている。

可能ならば、何とか自力で帰りたいところだ。そうでもしなければ特訓追加は目に見えている。

……もしかしたらしぐれなどが便宜を図ってくれるかもしれないが、約束を反故にした形なので当てに出来ない。

キャアキャア騒ぐ3−Aの教室を背後に、はぁ〜、と再びため息をはく。


(うん、取りあえずこっちには魔法って言う不思議な力があるんだ。
 帰る手段を魔法関係から探しつつ、岬越寺師匠の迎えを待つ形がベストだよね)


あとは僕らしく大人しくして平穏無事に過ごせば良いや、と心の中で締めくくり、


「先生ーーっ、大変やーーーっ! まき絵が……まき絵がーーー」

「「「「「何!? まき絵がどーしたの!?」」」」」


一瞬でそんな思いは破られることとなった。

保険委員であり、髪と目の色がちょっと変わっている和泉亜子が走ってくると、亜子の発言に驚いた3−Aの面々が

下着姿と言うあられもない格好でありながら、教室の扉を、窓をと開いて廊下へとその姿を晒したのだ。

当然、そこには亜子以外にネギ・スプリングフィールドと、我らが主人公、白浜兼一青年が居た。


(神様、これなんて試練ですか!?)


わぁ〜〜〜!? っと驚くネギをそらした視界の隅に確認しながら兼一は神様に問いかけた。

すぐさま来るだろう、理不尽な事態を想像して身震いしながら、

兼一がとれた行動は、少女達の姿を必死に視界から追い出すことだけだった。







……つづく





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