史上最強
それは武を学ぶものが目指す究極の称号
幾千幾万の者が己の生涯をかけて挑み
幾千幾万の者が夢半ばに散っていく
幾千幾万の者が後世に想いを託し
幾千幾万の者が想いを継いでいく
武とは 戦う術 守る術 己を磨く術など多種多様にして幾つもの道程がある
どの道を選ぶか
どの道が正しいのか
人の歴史の中で最強と呼ばれた者と同じ道ならばたどりつけるのか
誰もが悩み誰もが選択してきた数々の道
その中でも 最も険しい道を駆け抜け……真っ直ぐに落ちていった者がいた
これは 史上最強の称号を与えられた一人の青年の物語である
史上最強の教師 ケンイチ!! 第八話『史上最強の副担任!? 後編』
さて、良い子のみんな、久しぶり!
最初にとりあえずだが、兼一青年の現在までの状況を確認しよう。
兼一青年が梁山泊に入門して早五年、その日も修行と言う日常を過ごしていた彼に降りかかった非日常。
師匠の一人である岬越寺の作品の暴走による異世界への移動。
そして、魔法使い達との邂逅、何故か女子中学校の副担任へと言う有り触れた、ジョグレス進化の如き段階を踏みながら、
現在の兼一は窮地に陥っていた。
彼が副担任に選ばれた3−A、その方々のあられもない姿を一瞬とは言え見てしまったのだ。
詳しい内容は前回の話と原作3巻を見て補完してもらうとして、正しくピンチだと言うことは断言できる。
と、それだけでは不親切極まりないので簡単に説明すると、
身体測定をしていた3−Aの面々が、クラスメイトである佐々木まき絵嬢が〜という台詞を聞いて扉と窓を開けたのだ。
そうなると当然だが、3ーAの教室の廊下に居た兼一の視界には乙女の柔肌やら何やらが映ってしまっている。
賛否両論があるだろうが、非があるのはそんなあられもない姿で出てきた彼女達と答えるだろう。
まぁもっとも、女生徒のみで構成される女子中学校において、注意しろというのもいささか無理があるのやもしれない。
しかも、クラスメイトが大変だーと言う台詞まで聞いてしまったのだ、これはもう本気でしょうがない。
だがしかし、世間の荒波と言うか、お約束と言うものは得てして主人公(このSSの場合は兼一青年)に甘くはない。
驚きで固まってしまっているが、視線だけは横に逸らしていた兼一に対して跳躍する影が一つ。
そう、我らがヒーロー、ツンデレ姫でありバカレッドこと神楽坂アスナ嬢である。
横目で跳躍した彼女の姿を認めると同時に、兼一の思考回路がすぐさま回り始める。
回避行動をとるか、それとも撃墜するかと言う思考を展開しようとする兼一。
だが、兼一はまたもや見惚れてしまった。
助走距離ゼロ、予備動作無しであると言うのに、その姿は翼を得ているかのように上昇する。
威力を増すためだろう旋回行動も、飾り紐のごとく翻るツインテールによって舞と呼ぶに相応しい動作へと昇華している。
それは、彼にとっての『憧れの人』と言えるだろう女性の技に似てい――
「な、何見てんのよーーー!?」
「ちょ、待って――ほまぬぺり!!」
――と、思っていたのも束の間、奇声を上げて廊下の壁を、天井をとバウンドしながら兼一は盛大に15m程吹き飛んでいった。
『せ、制空圏がまた破られた!?』吹き飛びながら兼一の思考を駆け巡ったのはそんな驚きと『痛い』という感覚だった。
そう。アスナ嬢の放った、制空圏を突き破った一撃。
……誰が知ろう?
その一撃こそ、対ボケ用最終決戦奥義。
かの赤○ワールドにおける常時世界法則の一つである。
それは、対象がボケた瞬間、ツッコミが入ると言う結果を発生させる。
即ち、因果の逆転が生じ、まず「ツッコマれる」と言う結果が作り出された上で、その後にツッコミが放たれる。
故に、既にツッコマれていると言う結果があるため、制空圏だろうが魔法障壁だろうが空間転移だろうが、防ぎようがないのだ!
この対ボケ用最終決戦奥義から逃れるには、その時のボケ度に応じたシリアス値かラブ臭……もとい恋愛値が必要になる。
これは、某鉄拳女子大生のツッコミを、変装が得意の某妹王候補が愛すべき兄を救うために破ったことからも明らかである。
……とかなんとか。
そんなアホな世界設定をたらたらと流し終えたと同時に、スタっと、華麗に着地を決めるアスナ嬢。
悪乗りが信条の3−Aの方々も、流石に死んだのではと考え、誰もが喋らない。
嗚呼早々、アスナ嬢の飛び蹴りと兼一が吹き飛んでいく光景を生で見ていた某見習いシスターの心の声は、
『いや、普通に死んでるっしょ』であった。
そんな中、
「け、兼一さーーん!?」
ネギだけが兼一の元へと駆け寄る。
ネギの心の中は混乱の極みであった、よもや自分の生徒の中から殺人犯が!だとか考えてしまっている辺り、相当やばい。
だが、
「うぅ、また制空圏が破られちゃったよ……これが師匠達に知られたら…………死の七日間特訓が!」
そんなことをブツブツとうつ伏せの状態で呟いている兼一の姿を見て呆気にとられる。
「な、何で大丈夫なんですか!?」
「いや、ネギ君、それは酷くないかな?」
よいしょ、と言う気の抜ける声を上げながら立ち上がり、スーツのホコリを叩いてとっている青年にダメージは見られない。
この光景を見て、3−Aの一部の方々は内心で驚愕していたりしていなかったりする。
「さてと、ほらみんな、そんな格好じゃ出歩けないでしょ? すぐに着替えて着替えて」
次があったら堪らないとばかりに兼一は目を閉じて少女達を促す。
その言葉に、廊下に出ていたりした方々は、今の自分達の姿を確認し、慌てて教室内に戻って衣服を着用する。
「さてと、ネギ君……もう目を開けても良いよね?」
気配から少女達が教室内に戻ったことは確認できたが、兼一は一応聞いた。
先ほどのアスナだけなら、攻撃を受けても多少ダメージを負うもののまぁ平気である。
確かにどこの達人だと言いたくなるぐらい素晴らしい攻撃だが、それでも兼一に深刻なダメージを与えるには及ばない。
兼一が警戒しているのはその他の生徒である。
(……このクラスの子達って本気で一般人なのかな?
さっきの……ああこの子だ、クーフェさんもそうだし、他の子、桜崎さんに龍宮さん、長瀬さん。
……この子達、絶対に準達人級か、達人級だよ!)
何で中学校の一クラスにこれ程の実力者が集まっているのか?
ネギに渡されたクラス名簿を身ながら兼一は疑問に思った。
兼一青年でなくても、彼女たちの実力を知ったのなら誰もがこのクラスに対して疑問全開だろう。
と言うよりも、実力うんぬんよりこのクラスの方々は本気で中学生なのかと問いかけたくなるのだが、
その辺は兼一青年の回りも普通でないプロポーションや容姿の方々いたので兼一的には華麗にスルーである。
(あとは……この子だ、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさん。
見た目は昔のほのかぐらいなのに、僕の警報装置がバリ3だし、絶対に関わらないでおこう!)
原作を知っている方々は、その実態を知っているのでああそりゃそうだけどね、と思ってしまうだろう。
もしくは、もっと積極的に関われ、であろう。
兼一青年も、普通に彼女に出会ったのならそんな警戒心を抱くことはない。
だが、この時は違った。
ちらりとしか見なかったのだが、彼女のネギに対する瞳の鋭さに一瞬恐れを抱いたのだ。
それはもう、師匠方や闇の達人の方々が兼一を獲物のように見るときや……いや、ここではあえて言及しないでおこう。
兼一のトラウマを突つきかねない。
さて、そんなこんなで兼一青年の副担任生活の一日目が始まったのである……まる
いったい、何なんだろうか?
髪を左側でポニーテールにした、所謂サイドポニーの少女、桜崎刹那は心からそう思った。
副担任が来ると言うことは2の……3−Aの情報通、朝倉和美からもたらされていた。
2年の後半から来たネギ・スプリングフィールドと言う教師の年齢を考えれば、副担任をつけることは妥当だろう。
刹那からすれば、守るべき対象である近衛木乃香に被害が及ばなければ半ばどうでもいいことなのである。
だが、今現在教壇に立った青年、白浜兼一と言う存在が副担任になると言うことは、まったくの予想外だった。
扉を開いた直後から教卓までに仕掛けられた罠……。
ブービートラップまで仕掛けると言う、中学生のいたずらと言うには行き過ぎたものであると感じていた。
しかし、扉を開いた副担任だろう青年、彼はその全てを無造作に無効化してのけた。
最後の一撃に至っては、神鳴流の使い手たる刹那をして、油断していたのなら視認できないほどの速さで。
刹那は戦慄した。
白浜兼一と言う副担任の実力に、ではない。
それだけの実力を持った相手だと言うのに、現在クラスメイトに質問されている青年からは達人の臭いがしないのだ。
刹那の目からすれば、白浜兼一は無害なペンギンのような生物にしか見えない。
そのギャップに、刹那は困惑し、戦慄していたのだ。
もしも、あの罠がなければ、自分は白浜兼一をただの一般人の副担任と認識しただろう。
立ち居振る舞いからある程度武術をたしなんでいる事は推測できても、ここまでの実力者だとは気づかなかったはずだ。
自分以外はどうだろう?
そう思った刹那が仕事仲間でもある龍宮真名に目をやれば、肩をすくめて首を横に振っている。
どうやら、自分よりも観察眼に優れた真名であっても白浜兼一に関しては自分と同様らしい。
その後、クラスメイトである神楽坂明日奈が実は達人なのでは?と考えてしまうような事件があったり、
その際に白浜兼一が常人離れした頑強さの持ち主だということが分かったのだが、やや疲れ気味な刹那は華麗に流した。
そして、最終的に刹那が下した白浜兼一の評価は、
――おおよそ無害、関わるべからず。
であったとか何とか。
つづく