注意1:この作品の弓さんはアーチャーではないです。

 注意2:これはfateもしとは一切関わりがありません。

 注意3:これは電波による二次被害作品です。

     fateもしを書いていて本編で使用不可な電波がきたため別の作品として誕生しました。

 
 以上を踏まえた上で読んでやってもよいという奇特なかたは下へどうぞです。





    











 



 

        それは有り得たかもしれない物語 そのさんじゅうはち



 side by シロウ

 
 イリヤと暗くなってきた新都を並んで歩く。

 既に買い物はすませ後は帰るだけだ。

 そんな光景が、傍目にはどう見えているだろうか?

 オレとイリヤでは兄妹ってことでは通りそうにないんだが……。
 
 
 「ねえシロウ、手……繋いで良い?」


 何処か不安げに、まるでオレに断れるとでも思っているかのように言ってきた。

 オレはそれに戸惑いながらも当たり前のように答える。


 「へ? ああ良いよ」


 「えへへ〜シロウの手って暖かいね」


 その言葉を、イリヤはどんな気持ちで言ったのだろうか?

 声音は楽しげでありながら、表情は今にも泣き出しそうだ。


 「イリヤ、どうしたんだ?」


 「……アーチャー、ヘラクレスのことを思い出してたの」


 アーチャー、バトラーとセイバーを同時に相手にしても引けをとらない最強の名を冠するに値する英霊。

 イリヤのサーヴァント……いや、それ以上だった存在。

 
 「最初はね、ヘラクレスを制御するのに身体がとても痛くて何度もヘラクレスを貶したわ。

  でも……その度に『すまない』って言って頭を撫でてくれたの」


 ……その光景が目に浮かぶ。

 あの英霊は本当にイリヤのことが大切だったのだろう。

 だから、勝ち目の無い事を知っていてもイリヤを逃がすためにギルガメッシュと戦ったんだ。


 「ヘラクレスとは二ヶ月も前から一緒にいたのに……ありがとうって一言も言えなかった……」


 イリヤが俯き震えている。

 だが、泣いている訳ではない。

 ただ……後悔しているのだ。

 礼の一つも言えなかった自分に……。


 「……暗い話になっちゃったね」


 「いや、オレもセイバー達がそうなったらと思うとな……」


 今まで、オレは何の役にもたっていない。
 
 それこそ仮初のマスターと言ったところだろう。

 しかも、今はマスターですらない。

 ならば正義の味方を目指すものとして何をしたら良い?

 アイツ、バトラーならどうするだろう。

 あの、執事。

 オレの目的である正義の味方とは方向性が違うだろうに、オレを捕らえて離さないその在り方。

 切嗣以外で初めてオレが心から憧れた存在。
 

 「……シロウは、バトラーになりたいの?」


 「へっ? 

  ……いや、アイツはアイツだ。オレはオレの道を行くさ」


 そう、憧れは憧れでしかない。

 オレの行く道は既に決まっている。

 なら……進み続けるだけだ。

 どんな形であろうとオレはオレのやり方でこの戦いを終わらせる。

 だから―― 


 「ああ、やっと見つけたよ」


 ――何だ?

 唐突に聞こえてきた聞き覚えのある声、

 オレは辺りを注意深く探る。

 オレとイリヤは何時の間にか橋を越え、既に深山町へ入っていたようだ。

 そして、ある一点でオレの視点は止まる。

 海浜公園の灯りの下。

 そこには幽鬼の如くベンチに座る慎二の姿があった。 



 side by 慎二


 やっと見つけた器、その横には邪魔な何かがいるがまあいいか。 
 

 「慎二……お前どうして……?」

 
 その邪魔な何かは僕の名前を呼んだ。


 「はぁ? お前、誰だよ?
  
  僕はお前なんて知らない。僕が用があるのはそっちのガキさ」


 僕の言葉に邪魔者は絶句したようだ、だがどうでもいい。

 隣に居る柔らかそうな肉の"器"に僕は用があるのだから。

 そう、本来僕の中に来るべきアレの片割れを持つ器。

 だから、


 「さあ、お前の中にいるソイツを寄越せよ。

  心配しなくても痛みは……多分無いよ」


 半分しかないって変だ。

 だから補完する。

 もう半分を得る事で少しは満たされ、僕は……ボクハ?

 何かに成る……?

 ……まあいいか。

 とり合えずそうするだけだ。

 どうなるかは解らないが、後でハサンと考えれば良い。  

 
 「イリヤ、こっからの帰り道は解るな?」


 「えっ!? シロウ……戦う気なの?」


 どっちもブツブツと五月蝿いな。

 どうせ心臓をくりぬくんだから……生かしておく必要は無いか。
 
 決断したら即実行。

 僕は器に対して腕を向けた。


 「!? ト、投影開始!」

 
 アレ? 死んでない?

 訝しげによく見てみると、

 僕の腕から伸びた黒い影は邪魔者が何処からかだした双剣に遮られていた。

 へー、サーヴァントでもないのに影を防げるんだ……。

 器の横で荒い息を吐いて僕を睨んでいるソレに興味を持った。

 でも、


 「うざったいな。どうせ死ぬんだからじっとしてれば良いのに」


 殺してしまう事に変わりは無い。


 「慎二!?」


 「駄目よシロウ。アレに何を言っても無駄よ。

  だって……もうアレは間桐慎二じゃないもの」


 はは、何を言ってるんだか。

 僕は、僕は?
 
 ボクハ、ボクハ、ボクハ、ボクハ!?

 アレ? ワカラナイ、ボクハ……?

 
 「うわぁあああああああーーーー!!!」


 何だ!?
 
 僕は何だ!?

 解らない、解らない!

 

 side by 士郎
 

 「うわぁあああああああーーーー!!!」

  
 突然慎二が頭を抱えて叫び出す。

 一体何が?

 オレが介抱しようと走りだそうとした時、


 「シロウ! ……アレは聖杯として機能し始めてる。

  いえ、もう既に機能しているわ」


 慎二が……聖杯?

 イリヤや桜と同じ?


 「本来人にその機能は過ぎた物よ、それがホムンクルスだとしても。
 
  だから、聖杯として機能するための容量を空ける手段として人としての機能が消されていくの」 


 それじゃあ、もしかしたらイリヤがああなっていた?

 頭を掻き毟り地面を転がる慎二を見ながら想像した。
 
 ……それは、嫌だ。


 「……ううん。私なら、本来の聖杯として造られた私ならあんな風にはならないわ」


 まるでオレの心の声を聞いたかのようにそう言ってくる。

 そうこうしている内に慎二の叫び声は治まる。

 オレが再び慎二の方を向いた時、そこには慎二だった者がいた。

 髪の色は黒から白に近い灰色となり目は鈍い赤色に染まっている。

 そして、素肌の見える部位に何かの模様のような黒いアザが浮き出ている。

 ソレがオレとイリヤを見る。

 何の感情も感じられないその赤の瞳と目が合う。

 直感した。

 アレは危険だ。

 それこそあの英雄王、ギルガメッシュよりも危険だ!

 
 「投影開始――!」


 基本骨子を……馬鹿か!

 悠長にそんな事をしている場合か!?

 オレは工程の全てを省き幻想を一と成した。

 ――同時に、先程を倍する速さと力でオレの投影した干将莫耶に衝撃が走る。

 たった一度、たった一度のぶつかり合いで干将莫耶は砕け散った。

 これは……しょうがない。

 工程を省いたスカスカの剣では一度でも防げただけ上等だ。

 ただ……何故かその時、工程そのものが不必要なモノに感じた。


 「ぐっ! 投影……」


 オレは続けて投影をしようと集中する。

 ぐっ! あ、頭が割れるようだ……。

 さっき無理矢理投影したのがこれ程キツイとは……。


 「駄目よシロウ! このままじゃシロウの身体が……」


 そんな事は……無い。

 特訓の時は数だけならこの何倍も投影していたのだから。

 心配してくれるイリヤを一瞥してオレは再び投影を開始する。

 今アレはこちらを警戒してか何の行動もしてきていない。

 なら!
 
 その間に奴を打倒できるだけの幻想を造り出す。

 干将莫耶では駄目だ。

 オレに一番馴染んだ双剣ではアレに届かないと解った。

 だとすれば、あの剣を。

 戦場で彼女と共にあった黄金の剣を。

 実物もバトラーのおかげで見れた。

 今なら……今のオレなら出来るはずだ!


 「――――投影、開始」
 
 
 創造の理念を鑑定し、

 基本となる骨子を想定し、

 構成された材質を複製し、

 製作に及ぶ技術を模倣し、

 成長に至る経験に共感し、

 蓄積された年月を再現し、

 あらゆる工程を凌駕し尽くし――――


 ここに、幻想を結び剣と成す――――!
 
  
 「…………っ!」


 後ろでイリヤの息を飲む音が聞こえる。

 おそらくアレの攻撃が眼前に迫っているのだろう。

 だが、そんなことを気にしている余裕がオレにはない。

 今のオレは精神が高ぶり、神経が恐ろしい程に過敏になっている。

 正直、脳は溶けてなくなりそうなほどに熱を持ち頭は金槌で殴られたような頭痛で死にそうだ。

 体中からも汗が止めどなく出ているのが判る。

 そう、この黄金の剣の投影はオレにとって過ぎた業――。


 そんな状態だが、オレの掲げた腕の中には黄金の剣が確かにある。

 夢の中で彼女と共に戦場にあった。

 神話の再現とも言えるバトラーとセイバー、そしてアーチャーの戦いの中にあった。

 そして今、多少歪ながらオレ自身の手で再現された神秘がある。

 それを、確認したと同時に躊躇い無く振り下ろした。

 剣は何の感触もない程にあっさりと地面に到達し、朝露の如く消え去った。

 やはり……想定が甘かったらしい。

 
 「ぬぅあああーーーー!」


 オレの考えはその叫びによって遮られた。

 目の前でのた打ち回るソレ。

 剣の一振りで慎二だったソレ(以後慎二?と呼称)の右半身が跡形も無くなっていた。

 だがその失われた半身がゆっくりと蟲が這い出るように再生していき、

 同時に髪の色が戻り肌の模様が消えていく。
 
 元に……戻るのか?

 
 「ぬぐぅ! こ、これは一体どうしたことじゃ!?

  ぬう! こ、来い! ハサン!」


 残った左腕を二の腕辺りを輝かせて慎二?が叫ぶ。

 同時に辺りに魔力が溢れ、光が迸る。

 この光景は一度見たことがある。

 そう、ライダーとの戦闘でオレがセイバーを呼んだ時と同じ……!


 「くっ! イ、イリヤ! 早く家へ行け!

  何かは解らないがサーヴァントが来る!」


 今のオレでは……いや、どの道オレではサーヴァントの相手にならない。

 だったらそれが来る前にイリヤだけでも逃がさなければ。


 「でもシロウはどうす――「ぬ、これは……!? 魔術師殿……? 一体何が!?」――え?」


 イリヤの声を遮ったのは黒いサーヴァント。

 そこに居ると言うのに気配が薄く、今までに出会った他の英霊と同じサーヴァントとは思えない。


 「……ハサン、ここは……退く! 白き聖杯を目の前にして口惜しいんじゃが……。

  この身体ではな……。とにかく今は、現状を知りたい」


 「……御意」


 黒いサーヴァントは此方を一瞥した後、慎二?を抱えて夜の深山町へと消え去った。

 それを確認したオレは、


 「えっ? シ、シロウ!?」


 あっさりと意識を手放してしまった。

 
 そして、まどろみの中に落ちていく途中で……赤き外套の騎士を見た気がした。

 剣の乱立した、まるで墓標の如き丘でただ立っているその後姿。

 アレは……バトラー?

 疑問に思うがそれを確かめる術も無く、夢さえ見ない深遠たる眠りに再び落ちていく。 








 続く……のか?

 

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